「麻酔注射が怖くて、何年も歯医者に行けていない」——博多駅周辺でお仕事をされている方から、そんなお声をよくいただきます。その怖さには、ちゃんと理由があります。「どうして痛いのか」が分かると、少しだけ心が軽くなることがあるんですよね。この記事では、麻酔注射で痛みが生じる仕組みと、歯科医師が実践している3つの工夫を、できるだけ分かりやすくお伝えします。
「チクッとしますよ」の前に何が起きているのか——麻酔注射で痛みが生じる3つの原因
原因① 針が歯茎の神経を刺激する「穿刺痛(せんしつつう)」
まず知っておいてほしいのは、歯茎(歯肉)はとても神経が豊富な組織だということです。口の中の粘膜には、皮膚の数倍の密度で神経が走っています。そこへ針を刺すのですから、チクッとした刺激を感じるのはごく自然なことです。
ただし、針の太さが大きく関係します。現在の歯科用注射針は非常に細く設計されており、細くて切れの良い針が開発され、また麻酔薬の温度管理にも気を配ることで以前よりはるかに痛みの少ない注射になっています(日本歯科医師会「テーマパーク8020」より [1])。
つまり、「昔に怖い思いをした」記憶と、今の実際の治療とでは、器具の精度がかなり違ってきているんです。
原因② 麻酔液の注入速度と圧力
針を刺す痛み以上に、実は多くの方が「ズーンとした圧迫感」を感じるのが、麻酔液を注入する瞬間です。歯茎の組織の中に液体が流れ込むとき、周囲の組織が押し広げられ、その圧力が痛みの受容体(痛みを感じるセンサー)を刺激します。
注入のスピードが速ければ速いほど、組織への刺激は大きくなります。逆に言えば、ゆっくり注入するだけで、この圧迫痛は大幅に和らげることができます。
また、麻酔液の「温度」も見落とされがちな要因のひとつです。体温より冷たい液体が歯茎に注入されると、温度差による刺激が加わります。体温より温度が低い麻酔液が注入されると、温度差による刺激から痛みを感じやすくなります。麻酔液の注入速度も、痛みに大きく影響します。速いと組織への刺激が大きくなり、痛みを感じやすいのです。
原因③ 緊張・不安による痛みの増幅
「怖い」と思うほど、実際の痛みを強く感じやすくなる——これは医学的にも確認されている現象です。
麻酔注射の後に気分が悪くなった場合、原因の多くは過剰な緊張や不安がもたらす精神的反応であることがわかっています(日本歯科医師会「テーマパーク8020」[1])。恐怖心から体が緊張すると筋肉が強張り、血管も収縮します。そうすると、麻酔液が組織に広がりにくくなるうえ、刺激をより鋭く感じやすい状態になるのです。
「怖い→緊張する→より痛く感じる」という悪循環に陥りやすいのが歯科の麻酔です。だからこそ、精神的な緊張を和らげることが痛みの軽減に直結します。
表面麻酔・電動注射器・緩速注入——痛みに配慮した麻酔の3ステップ
必要に応じて表面麻酔を用いたり、電動式注射器を使用したりと様々なテクニックを使って痛くなくよく効く麻酔が行えるようになりました(日本歯科医師会「テーマパーク8020」[1])。
当院(博多I’S歯科・矯正歯科)でも、痛みに配慮した以下の3ステップで麻酔を行っています。
ステップ① 表面麻酔——「針が刺さる前」から準備が始まっている
麻酔薬を歯茎に塗って表面の感覚を麻痺させる方法です。表面麻酔を行った後で注射をすると「痛みをとるための麻酔が痛い」がずいぶんとラクになるのです。実際には口の中にガーゼやコットンロールを入れて、歯肉に塗った麻酔薬が流れないように唾液をブロックしつつ数分間作用させます(日本歯科医師会「テーマパーク8020」[1])。
表面麻酔には、ゼリー状・スプレー状などの剤型があります。治療が始まる前に「綿のようなものを歯茎に当てられた」という経験がある方も多いと思いますが、あの工程がまさに表面麻酔です。針を刺す部位に局所麻酔薬の含まれたゼリーや軟膏などを塗る方法、すなわち表面麻酔法が一般的で、日本歯科麻酔学会もその有効性を認めています[2]。
表面麻酔が十分に効いてから注射を行うため、「チクッ」の感覚を大幅に抑えることができます。数分の待ち時間がある場合は、「麻酔が準備されているサイン」と思っていただけると安心です。
ステップ② 電動注射器——コンピューターが「圧力」を均一にコントロールする
電動式注射器(コンピューター制御の自動麻酔注射器)は、麻酔液を一定の速度・圧力で注入できる器械です。手動のシリンジと違い、注入スピードのムラがなく、組織への刺激を安定して最小限に保てます。
当院では、この電動注射器を導入しています。外見が従来のシリンジと異なるため初めて見ると驚かれることもありますが、むしろ痛みへの配慮が高い器具です。
| 比較項目 | 手動シリンジ | 電動注射器 |
|---|---|---|
| 注入速度の安定性 | 術者の手加減による | コンピューター制御で均一 |
| 組織への刺激 | 速く押すと大きくなる | 一定に保たれる |
| 患者の圧迫感 | 強く感じやすい | 軽減されやすい |
ステップ③ 緩速注入(かんそくちゅうにゅう)——「ゆっくり」が最大の鍵
どんな注射器を使っていても、最終的には「どれだけゆっくり注入するか」が痛みの左右を決める大きな要因になります。当院では、麻酔薬を段階的に注入し、効果を確認しながら少しずつ深部へ進める方法を採用しています。
また、麻酔液の温度を体温に近い状態に保つことも大切な工夫のひとつです。注入前に麻酔液をあらかじめ温めておくことで、温度差による刺激を和らげています。
歯科では高頻度に局所麻酔を使用する。歯科診療中の全身的偶発症/合併症の発生は局所麻酔中や直後に多く、歯科医師は安全な局所麻酔を行うために、その手技はもとより周術期の対応について熟知し、全身評価・管理に努めると、日本歯科麻酔学会の「安全な歯科局所麻酔に関するステートメント(2019年)」でも示されています[2]。丁寧な手技が、安全性と快適性の両方を担保しているのです。
怖いと感じたら遠慮なく伝えて。博多の患者さんが実践できるコミュニケーション術
「怖い」のひと言が、治療の質を変える
「先生に言うのが申し訳ない」「大げさに見られるかも」と思って黙って耐えている方が、実はとても多いのです。でも、怖いということを伝えてもらえると、歯科医師やスタッフは対応を調整できます。
たとえば、当院では「麻酔が怖い」とひと言おっしゃっていただくだけで、次のような対応が可能です。
- 表面麻酔の時間を長めに確保する(より確実に効かせるため)
- 電動注射器で注入速度をさらにゆっくり設定する
- 「今から針を刺します」など、次の動作を事前に声がけする
- 手を挙げたら一時停止するサインを決めておく
「局所麻酔で痛みが抑えられるのはわかっているのだけれど、歯を削る音や振動、薬品のにおいなどが苦手で治療が受けられない」という患者さんにうってつけの方法が精神鎮静法と呼ばれる麻酔法です。リラックス効果の高い麻酔薬を利用して、うとうとした状態で治療が受けられるので恐怖心や不安感が軽減します(日本歯科医師会「テーマパーク8020」[1])。強い不安がある場合には、こういった鎮静法について相談できる歯科医院を探すことも選択肢のひとつです。
受診前にできる「自分での準備」
怖さを少しでも和らげるために、受診前に試してほしい工夫をいくつかご紹介します。
当日の朝・来院前
- 十分に睡眠をとる(睡眠不足は痛みへの感受性を高めます)
- 空腹を避ける(血糖値が低いと緊張しやすくなります)
- 締め付けの強い服装を避け、身体をリラックスさせやすい状態にする
診療室の中で
- 深呼吸を意識する(鼻から4秒吸って、口から6秒ゆっくり吐く)
- 肩・手・足の力を抜くことを意識する
- 不快感が出たら手を挙げて伝える(遠慮は不要です)
緊張すると肩に力が入りますよね。意識して力を抜くだけで、麻酔の効きが変わってくることもあるんです。
「何年も行けていない」方にこそ知ってほしいこと
局所麻酔が必要な患者においては、血管迷走神経反射や過換気症候群などの既往について把握すると、日本歯科麻酔学会は歯科医師に求めています[2]。つまり、「以前に麻酔で気分が悪くなった」「注射でパニックになりそうになった」という経験がある方も、事前に伝えれば対応できます。
また、歯科治療時に使用される局所麻酔薬による重症のアレルギーの発生頻度は極めて低いとされています。局所麻酔薬アレルギーと診断されている方は、局所麻酔時の血管迷走神経反射(脳貧血)や過換気症候群などで気分が悪くなった症状をアレルギーだと誤診されていることが多い(日本歯科麻酔学会「歯科麻酔Q&A」[2])という指摘もあります。「麻酔アレルギーと言われた」という方も、まずご相談ください。
久しぶりの受診が怖い方に向けた記事も、ご参考にどうぞ。
麻酔が怖い方のための、当院の診療体制
博多I’S歯科・矯正歯科(旧:博多歯科医院、2026年5月より改称)は、福岡市博多区の櫛田神社前駅からすぐの立地にあります。
「麻酔が怖くて長年受診できていなかった」という方も、特に博多駅周辺でお仕事をされている患者さんには少なくありません。当院では、守尾一起院長のもと「抜かない・削らない」を基本方針とし、患者さんの不安に寄り添う診療を心がけています。
また、当院が所属する新心会グループには総勢100名を超える歯科医師が在籍しており、各分野の専門家と連携しながら、難しいケースにも対応できる体制を整えています。
診療は平日は夜20時まで、土日も診療していますので、日中に時間が取れない方にも受診いただきやすい環境です。「歯が痛くなった日曜に診てもらえる場所を探している」という方は、下記もご覧ください。
日曜日に歯が痛くなったら?博多区で休日も診てもらえる歯医者の探し方(https://hakatad-c.com/blog/001/)
まとめ
- 麻酔注射の痛みには3つの原因がある:①針刺入の刺激(穿刺痛)、②注入時の圧力・温度差、③緊張・不安による痛みの増幅。仕組みを知ることで、怖さが和らぐことがあります。
- 3ステップで痛みに配慮できる:表面麻酔(ゼリーや軟膏で事前にしびれさせる)→電動注射器(コンピューター制御で一定の速度)→緩速注入(体温に近い温度でゆっくり)の順で行うと、感じる刺激を大きく軽減できます(日本歯科医師会「テーマパーク8020」、日本歯科麻酔学会ガイドラインより)。
- 「怖い」と伝えるだけで対応は変わる:事前に伝えれば、表面麻酔の時間延長・ゆっくり注入・動作の事前告知・手を挙げたら一時停止などの配慮が可能です。
- 過去の「気分が悪くなった経験」も相談できる:アレルギーと思われていた症状が、緊張による血管迷走神経反射である可能性もあります(日本歯科麻酔学会「歯科麻酔Q&A」)。
- 何年も受診できていない方こそ、まず「怖い」をひと言:当院では、その声から一緒に対応策を考えます。
平日は夜20時まで、土日も診療している博多I’S歯科・矯正歯科では「麻酔が怖い」とひと言伝えるだけで対応を調整します。福岡市博多区・櫛田神社前駅すぐのアクセスで、急患対応やセカンドオピニオンのご相談も受け付けています。まずは24時間WEB予約からお気軽にご相談ください。公式サイト:https://hakatad-c.com/
はじめて受診される方は、初めての方へ(初診の流れ)もあわせてご覧ください。
参考文献
[1] 日本歯科医師会「歯科麻酔 – テーマパーク8020」jda.or.jp
[2] 一般社団法人 日本歯科麻酔学会「歯科麻酔Q&A」jdsa.jp /「安全な歯科局所麻酔に関するステートメント(2019年)」jdsa.jp
