「また今日もレントゲンを撮られた。毎回撮るのは何か理由があるのかな、体への影響は大丈夫なのかな」——歯科に通うたびにそう感じている方は少なくありません。そう思いながらも、なかなかその場で聞き出せずにいる方もいらっしゃいますよね。今回は、歯科医師として患者さんからよく聞かれるこの疑問に、正直にお答えします。
「また撮るの?」レントゲンを毎回撮る本当の理由
目に見えない部分を「見る」ための大切な検査です
口の中をどれだけ丁寧に見渡しても、歯の内部・歯の根の先・顎の骨の状態は、肉眼では確認できません。レントゲン(X線撮影)は、X線が体を通過する際の透過のしやすさの違いを画像にするもので、骨や歯のような硬い組織は白く、虫歯の進んでいる部分やほかの組織は黒〜灰色に映ります。
たとえば、こんな情報がレントゲン1枚から得られます。
- 歯と歯の間に隠れた虫歯(視診だけでは気づけないケースが多い)
- 詰め物・被せ物の下に再発した虫歯
- 歯の根の先に生じた炎症(根尖病変)
- 歯を支える骨(歯槽骨)がどれくらい溶けているか(歯周病の進行度)
- 顎の骨の中に埋まっている親知らずの位置
環境省の資料によると、「歯科撮影のように局所的にごく僅かな被ばくをするものもある」と整理されており、歯科のレントゲンは医療画像検査のなかでも被ばく量が極めて少ない部類に分類されています[1]。
「前回撮った」でも今回また撮る理由
「この間撮ったばかりなのに」と感じることもあるかもしれません。しかし、虫歯や歯周病は数ヶ月という短い期間でも進行します。治療中であれば「薬がきちんと入っているか」「骨が回復しているか」を確認するために、異なるタイミングで撮影が必要になります。
また、初診時に撮るパノラマレントゲン(お口全体を1枚で写す大きいレントゲン)はお口全体の地図のような役割を果たし、デンタルレントゲン(2〜3本の歯を詳細に写す小さいレントゲン)はその後の治療で必要な箇所を拡大確認するために使います。それぞれ「全体を俯瞰する」「細部を確認する」という使い分けがあるため、治療の段階に応じて必要な撮影が変わるのです。
撮影しないリスクのほうが大きいこともある
レントゲンを撮らずに治療を進めることは、地図なしで知らない土地を運転するようなものです。根管治療(歯の根の中を清掃する治療)では、歯根の本数・形・長さを把握しないまま処置を行うと、神経の取り残しや器具の破折につながるリスクがあります。
当院(博多I’S歯科・矯正歯科)では、「抜かない・削らない」を基本方針として患者さんの歯を長く守ることを大切にしています。そのためにも、レントゲンによる正確な情報をもとに「本当に必要な治療だけを、必要な範囲で行う」という診断プロセスを重視しています。
2Dレントゲンと歯科用CT、何が違うの?
「平面の地図」と「立体の地形図」のちがい
通常のレントゲン(デンタル・パノラマ)が2次元の平面画像であるのに対し、歯科用CTは三次元(3D)データを取得できる装置です。レントゲンは二次元の平面画像であるため奥行きの情報がなく、複数の構造物が重なって見えることから、上顎洞と歯根の位置関係や、神経管と親知らずの距離などをレントゲンだけで詳細に判断することは困難です。一方、歯科用CTでは三次元データとして記録されるため、重なりのない明瞭な画像を得ることができ、骨の厚みや密度、病変の正確な大きさや位置を計測することも可能です。
わかりやすく言えば、デンタル・パノラマが「2Dの地図」なら、歯科用CTは「高低差まで分かる3Dの地形図」です。真正面からだけでなく、横・斜め・断面など、あらゆる角度から確認できます。
歯科用CTが特に必要になる場面
以下のような治療や診断の場面では、3次元的な情報が欠かせません。
| 場面 | CTが必要な主な理由 |
|---|---|
| インプラント治療 | 埋め込み位置の骨の厚さ・高さ・神経の走行を確認 |
| 難しい親知らずの抜歯 | 下顎の神経管との距離を3Dで把握し、安全な角度を検討 |
| 根管治療(複雑な根形態) | 根の本数・彎曲・根尖の病変の広がりを立体的に確認 |
| 歯列矯正の精密診断 | 埋伏歯の位置・顎骨の形態を把握 |
| 口腔外科的処置 | 嚢胞・腫瘍などの病変の範囲・周囲組織との関係を確認 |
インプラント治療においては、インプラント体を埋入する際に顎骨の高さ、幅、密度を詳細に把握する必要があるため、歯科用CT検査が基本的に必須です。レントゲンでは骨の幅を確認することができないため、歯科用CTによる三次元的な評価が不可欠です[2]。
医科用CTとはどう違う?被ばく量も大きく異なります
病院で行う「医科用CT」とは、歯科用CT(コーンビームCT:CBCT)は別の装置です。医科用CTと比較して、歯科用CTは撮影範囲が口腔周囲に限定されているため、被ばく量が少なく、撮影時間も短いという特徴があります。また、座位や立位で撮影できる機種が多いため、患者さんへの負担も軽減されています。
当院では、精度の高い診断を実現するために歯科用CTを導入しています。インプラントや難抜歯、複雑な根管治療などでCTが必要と判断した場合に活用しており、「必要なときに必要な検査を行う」という方針のもとで運用しています。また、CT・マイクロスコープ・光学スキャナー(iTero5D)を組み合わせることで、視診だけでは把握しきれない情報を多角的に得て、より精密な治療計画を立てることが可能です。
歯科のレントゲンで受ける被ばく量はどのくらい?日常生活と比べてみた
そもそも「被ばく」とは?自然界にも放射線はあります
「被ばく」という言葉は不安を感じさせますが、私たちは毎日、自然界の放射線を浴びながら生活しています。環境省の資料によると、宇宙・大地・食物や空気中のラドンなど、自然由来の放射線による被ばくは合計すると年間で世界平均では2.4ミリシーベルト(mSv)、日本平均では2.1ミリシーベルトになります[1]。
放射線の単位は「シーベルト(Sv)」、その1,000分の1が「ミリシーベルト(mSv)」です。この数字を基準に、歯科のレントゲンがどのくらいかを見ていきましょう。
歯科レントゲンの被ばく量を比較してみると…
| 検査・行為の種類 | 1回あたりの被ばく量の目安 |
|---|---|
| デンタルレントゲン(小さいもの) | 約0.01 mSv |
| パノラマレントゲン(全体像) | 約0.03 mSv |
| 歯科用CT(コーンビームCT) | 約0.1 mSv |
| 胸部X線検査(健診など) | 約0.06 mSv |
| 東京〜ニューヨーク航空機往復 | 約0.11〜0.16 mSv |
| 自然放射線(日本の年間平均) | 約2.1 mSv/年 |
※上記の歯科撮影の数値はメーカー公表値・文献値に基づく一般的な目安です。機器・撮影条件により異なります。
環境省は「医療での放射線利用は『必要な検査を必要なときに行う』ことを前提にしており、2015年には診断参考レベルが設定され(2020年及び2025年に改訂)、画像の質を保ちつつ放射線量をできるだけ低く抑える取組が進められています」としています[1]。
歯科用CTの0.1 mSvという数字も、東京〜ニューヨーク片道フライト分とほぼ同等です。日本の自然放射線の年間量(約2.1 mSv)と比べても、歯科CTを複数回撮影しても年間自然被ばくを大幅に超えるということはありません。
妊婦・子どもへの配慮について
「妊娠しているけれど大丈夫?」「子どもへの影響は?」というご質問もよくいただきます。
妊娠中については、とくに妊娠初期(器官形成期)は、可能であればレントゲン撮影を延期することが一般的な考え方です。歯科のレントゲンは照射範囲が口腔周囲に限られており、防護エプロン(鉛の入ったエプロン)を着用することで腹部への線量は極めて少なくなりますが、緊急性のない場合は、担当医に状況をお伝えいただくのが安心です。
お子さんについても、照射量は成人と同様に少量です。当院では撮影前に患者さんに説明したうえで、撮影の必要性・タイミングを都度検討しています。不安なことがあれば、気軽に「これ、本当に必要ですか?」とお聞きください。
環境省の資料では、「人への健康影響が確認されている被ばく線量は、100ミリシーベルト以上であると考えられています」と示されています[1]。デンタルレントゲン1回(約0.01 mSv)と比較すると、その差は約10,000倍です。歯科のレントゲンは、この影響が出るとされる水準をはるかに下回っています。
当院で行う精密画像診断について
CT・マイクロスコープ・光学スキャナーの連携
博多I’S歯科・矯正歯科では、精度の高い治療を実現するために、歯科用CT・マイクロスコープ・光学スキャナー(iTero5D)を導入しています。
- 歯科用CT:インプラント・難抜歯・複雑な根管治療など、3次元情報が必要な場面で活用します。
- マイクロスコープ(歯科用顕微鏡):肉眼では見えない根管の細部や微小なひびを拡大して確認し、不必要な削除を最小限にします。
- 光学スキャナー(iTero5D):口腔内を3Dスキャンし、型取り不要でデジタルデータとして記録します。矯正治療やセラミック補綴物の精密な設計に活用します。
これらの機器は、「使えばよい」ではなく「本当に必要な場面で使う」という判断のもとで運用しています。レントゲン・CTの撮影が必要な場合には、目的と必要性をお伝えしてから撮影するようにしています。
「なぜ撮るのか」を説明してから進めることが大切
当院が所属する新心会グループには総勢100名を超える歯科医師が在籍しており、インプラント・矯正・歯周病・口腔外科など各分野の専門家と連携しています。複雑な症例では、グループ内の専門医にCT画像データを共有しながら診断することもできます。
また、他院で撮影した画像についても持参いただければ参考にすることができますし、「他院で勧められた治療について改めて確認したい」というセカンドオピニオンにも対応しています。画像をもとに、何を診て、どういう判断でその治療を提案しているかを丁寧にご説明することを大切にしています。
まとめ
- 歯科のレントゲンは、肉眼では見えない虫歯・骨の状態・根の炎症を把握するための必須の検査です。 撮らずに治療を進めることのほうが、診断精度の低下というリスクを生みます。
- 2Dレントゲン(デンタル・パノラマ)と歯科用CT(コーンビームCT)は役割が異なります。 2Dは全体像の把握や通常の虫歯治療に、CTはインプラント・難抜歯・複雑な根管治療など立体情報が必要な場面に使い分けます。
- 歯科のレントゲンによる被ばく量は、日常生活の自然放射線と比べてもごくわずかです。 環境省によると、「医療での放射線利用は『必要な検査を必要なときに行う』ことを前提に」しており、歯科においても不要な撮影を重ねないことが原則です。
- 妊娠中・お子さんへの撮影については、必要性を慎重に判断し、防護エプロンの着用などで配慮します。 不安があれば遠慮なくお申し出ください。
- 当院ではCT・マイクロスコープ・iTero5Dを導入し、必要な場面で精密な画像診断を行っています。 「なぜ撮るのか」を説明してから進めることを大切にしています。
「説明を聞いてから治療を受けたい」「他院での検査結果についてもう一度確認したい」という方も歓迎です。博多I’S歯科・矯正歯科はセカンドオピニオンに対応しており、平日20時まで・土日も診療しています。24時間WEB予約からお気軽にどうぞ。
博多I’S歯科・矯正歯科
福岡市博多区博多駅前3丁目30-15(櫛田神社前駅すぐ)
24時間WEB予約:https://hakatad-c.com/
はじめて受診される方は、初めての方へ(初診の流れ)もあわせてご覧ください。
参考文献
[1] 環境省「診断で受ける放射線量」env.go.jp
[2] 環境省「年間当たりの被ばく線量の比較」env.go.jp
